企業から寄せられた声(文字情報)

株式会社松田モデル

会社概要

所在地: 東京都江戸川区
業種: 製造業
資本金: 3,000万円
従業員数: 124人
URL: http://www.matsuda-model.co.jp/

訓練概要

訓練コース: 原型モデル(CAD)製作養成コース
職種: CADオペレータ
訓練生数: 2人(終了後2人を正社員採用)
期間: 平成22年1月~4月
訓練種別: 有期実習型訓練(基本型)

1.制度の活用に取り組んだ目的

株式会社松田モデル
東京都江戸川区の社屋の全景

 当社は、おもちゃ・ゲーム・アミューズメントやセールス・プロモーション、カー・アクセサリー、遊技機、ディスプレイ什器、モニュメントの製作などの様々な業界の商品企画から原型モデル製作、機構設計、量産用3Dデータの製作など、原型の製作から量産までをグループ会社で一貫して行っている会社です。昭和48年8月の創業以来、今年で40周年を迎えました。
 当社の人材の育成・確保の方法としては、主にハローワークを活用し、新規学卒者や中途採用者を補充してきました。しかし、日々の仕事に追われていたために、社員教育(一般常識や専門知識)をなかなか実施できなかったのが実情でした。時間があっても、社員を育てるために投資できない日々が続いていましたので、社員教育の遅れによる人格形成の遅れや作業効率の悪さが日に日に増大していました。
 その打開策について模索していた折、ハローワークでジョブ・カード制度の有期実習型訓練に関する資料をみつけました。そのときは、「この制度を活用すれば、当社でも少ない経費負担で成果をあげられるのではないか」との思いがありました。そこで、平成21年6月末に東京商工会議所で開催された企業説明会に参加し、ジョブ・カード制度の仕組みや企業での活用事例などについての説明を聞きました。
 その結果、当社がこれから発展していくための人材の育成・確保策として、ジョブ・カード制度の雇用型訓練(有期実習型訓練および実践型人材養成システム)を活用することにしました。

2.具体的な取組内容

株式会社松田モデル
OJTの実施風景

 当社では、これまでに有期実習型訓練を7回(基本型:3回、キャリア・アップ型:4回)、実践型人材養成システムを2回それぞれ活用し、36人(このうち、有期実習型訓練は10人)を正社員として採用しています。加えて、平成25年4月からは、4人程度の新規学卒者を対象とした有期実習型訓練を実施する予定です。
 有期実習型訓練は、訓練生を新規募集する基本型とパートやアルバイトなどの有期雇用者を対象として訓練を実施して正社員に転換するキャリア・アップ型の2つがあります。
 このうち、基本型は、応募者の全てに訓練を受講する資格が与えられるわけではありませんので、注意が必要です。そのメリットとしては、中途採用者の場合、外部知識などの新しい風を社内に取り入れることができることです。逆に、デメリットとしては、短期間での採用面接で訓練生としての適格者を探すのが難しいことや講師を務める社員の精神的な負担が大きいことです。
 また、キャリア・アップ型は、パートやアルバイトなどの有期雇用者を正社員に転換するものですので、これまで以上に自分の仕事に対する責任感やヤル気を引き出し、社員同士のチームワークで効率よく仕事ができる体制づくりに活用できます。そのメリットとしては、当社に何年か勤務していることから、訓練生となった有期雇用者の性格や人柄などが分かっていますので、訓練の期間中に挫折することなく、正社員になれる確率が高いことや講師を務める社員の精神的な負担が少ないことです。デメリットとしては、中途採用者と違って、劇的な社内の変化は望めないことです。
 訓練を実施するに当たっては、他人任せにはしたくありませんでしたので、まずは、私自身が登録キャリア・コンサルタントの資格(一定の要件を満たす場合は、日本生産性本部が実施する2日間の「ジョブ・カード講習」の受講で取得できます)を取得し、当社内でもキャリア・コンサルティングを実施できる体制をつくりました。
OJTの講師を務める社員は、病欠や日々の仕事の納期なども考慮したうえ、訓練生1人に対して講師2人体制とし、訓練生に対する指導が途切れないように配慮しました。
 また、「Off-JTで学んだ事柄が現場で実践できているのか?」ということも重要ですので、Off-JTの講師となる社員とOJTの講師を務める社員の意見交換の場も増やし、Off-JTとOJTが連動した訓練になるように注意を払いました。
 このうち、Off-JTでは、主として原型モデル製作業界で働くために不可欠な知識(原型モデル製作から量産まで、各行程の基礎知識、OJTで苦手な部分や理解の浅い部分の克服など)を習得させました。また、OJTでは、原型モデル製作で使用する機器・ソフトウェアなどの操作手順について指導し、初歩的な3Dデータの作成や原型モデル製作などの技術を体験させる場としました。

3.阻害要因とそれを乗り越えるための工夫

(1)これまでは、後輩に教えるということがなく、先輩の技術を盗むといった実力主義でしたので、講師を務めた社員が訓練生を指導することに対する精神的な負担が増えました。このため、精神的なケアをしながら、訓練生に対する指導を意識させました。

(2)講師を務めた社員が訓練カリキュラムの進行を優先させすぎたあまり、本来の仕事が遅れてしまう結果となりました。これを補うために、残業や休日出勤が増えましたので、講師を務めた社員の負担が増大しました。やはり、余裕をもった訓練カリキュラムづくりが必要だと実感しました。

(3)当社のように、人的、資金的な余裕がない中小企業としては、助成金の魅力は捨てがたいのですが、有期実習型訓練を実施するためには、負担や苦労が伴うことを事前に認識し、将来への投資であるとの意識をもちながら、全社的に取り組む必要があります。

(4)講師を務める社員のレベル(知識や技術、指導能力)の向上がなければ、どこかのレベルで成長は止まります。新人に限らず、社員全員に教育を受けさせる環境も必要です。いわば、「社員教育に終わりはない」ということです。

 1回目の有期実習型訓練の独立行政法人 雇用・能力開発機構(現在は東京労働局)への申請に当たっては、東京商工会議所に設置されている東京都地域ジョブ・カードセンターの制度普及推進員の方から必要な申請書類や注意点などについて丁寧な指導をしてもらったうえ、申請にも同行してもらいましたので、非常に助かりました。2回目以降の訓練では、当社で全ての申請書類を作成し、独自に申請しています。
 代行申請などもできますが、最初の訓練では、担当者が苦労して申請することが大切だと思います。また、申請書類の種類が非常に多いので煩雑ですが、制度普及推進員から適確なアドバイスをもらえますので、へこたれずに最後まで頑張ることが大切だと思います。
 訓練生は、基本型のときはハローワークなどで募集しましたが、募集期間内に募集要件にマッチした人材を探し出すことの難しさを実感しました。また、キャリア・アップ型は、社内のパートやアルバイトなどの有期雇用者に対して社内告知して公募しました。加えて、有期雇用者が所属している部署長からも、会社全体で後押ししている訓練であることを各部署の社員に説明しましたので、理解を得ることができました。会社全体の後押しがあることを明確にすることによって、訓練生のチャレンジ意欲を後押しできますので、正社員となって安定した環境で仕事に打ち込みたいとの意欲も増します。
 また、訓練を実施するに当たっては、OJTとOff-JTの両方の講師を務める社員の意識を統一することが重要です。加えて、日々の情報交換や連携、改善が非常に重要だと思っています。

4.制度の活用による具体的な効果

 1回目の有期実習型訓練を実施したときは、「楽をして、助成金を受給したい」との気持ちがありました。しかしながら、ジョブ・カード制度の有期実習型訓練の活用の前には考えもしなかった負担や苦労があるのも事実でした。「社員の成長=将来の会社の財産」という考えをもって忍耐強く取り組まないと、制度の有効活用は難しいと思います。 また、社員全員の協力がなくては、絶対に成り立たない訓練ともいえます。
 ジョブ・カード制度の有期実習型訓練を活用した意義としては、①社会貢献の立場からいえば、社員全員が「正規雇用の推進のための企業としての責任を担う」という意識をもてたこと、②社内のコミュニケーションの機会が増え、社員間の信頼関係が増したように思われること、③講師を務めた社員以外の社員にも、「指導の重要性」を考える姿勢がみられるようになったことです。
 その他の感想としては、以下のとおりです。

(1)一般公募での有期実習型訓練(基本型)の場合は、訓練生の性格や人柄などが分かりませんので、講師を務めた社員の精神的な負担が非常に大きいことから、訓練生と同様に講師となる社員のケアも必要です。

(2)キャリア・アップ型の場合は、人間関係がある程度できあがっている中での訓練ですので、講師を務めた社員の精神的な負担は少ないのですが、馴れ合いになる傾向があります。このため、講師を務める社員を指導する立場の責任者は、指導内容を注意深く監督する必要があります。

(3)これまでは部下をあまり指導したことがなかった社員も、この訓練に取り組むために事前に勉強していたようですので、訓練生と同様にヤル気がみられました。

(4)指導項目は、評価シートをみれば具体的に分かりますので、指導する側(=講師を務める社員)、指導される側(=訓練生)の認識が統一されましたので、不足する能力を補う重点的な指導ができるようになりました。

(5)キャリア・アップ型の場合は、ベースとなる基礎知識がありますので、訓練カリキュラムどおりに進む度合いは、基本型とは比較にならないほどよかったと思います。

(6)当然ながら、「訓練カリキュラムを効率よく進めること=よく理解できた」ではありませんので、個々の訓練生のレベルに合った指導が必要です。

(7)昨今の景気悪化の影響もあると思いますが、当社での新入社員(中途採用者を含む)の離職者が減少しました。

 
【事務局後記】
 この原稿は、平成24年10月24日に開催した東京および八王子、立川、町田の4商工会議所の主催による「ジョブ・カード制度企業説明会」で、制度の活用事例を発表していただいた同社の取締役常務・松田毅氏の発表内容に一部加筆したものです。

(平成24年11月現在)

有期実習型訓練の概要

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