企業から寄せられた声(文字情報)

株式会社陸前織物

会社概要

所在地: 茨城県行方市
業種: 製造業
資本金: 1,000万円
従業員数: 190人

訓練概要

訓練コース: カーテン縫製加工コース
職種: 縫製工
訓練生数: 新規学卒者4人
(終了後に全員を正社員採用)
期間: 平成24年4月~7月
訓練種別: 有期実習型訓練(基本型)

1.制度の活用に取り組んだ目的

株式会社陸前織物
縫製工場の全景

 当社は、インテリアの専門商社である㈱サンゲツ東京店の専用工場として、昭和50年6月に設立したカーテンの縫製会社です。以来、成長を続けてきており、受注先は、東京や横浜、関東地域一円の大手ビルやマンション、病院、公共施設、各学校などと幅広く、オーダーカーテンの受注業務を拡大しています。また、地域産業の活性化と雇用の創出にも貢献しています。
 当社では、品質管理が非常に重要だと考えていますので、技術の向上と納期を守ることに力を入れてきていますので、社員の一人ひとりが技術力の向上を図れるような環境の整備と自己啓発に向けて指導してきました。
 当社の業務は、主に手作業のために、職場での作業に関する教育が中心であり、“見て覚え、やって身に付ける”という日本の伝統的なものづくりのための技能を習得させてきました。
 このため、折角、入社しても、短期間で退職してしまう社員が多かったので、若い社員が定着しませんでした。当社の将来のことを考えると、高齢の社員が多いために、その退職が予想されます。このようなことから、社員の年齢構成のバランスが崩れてしまうという不安がありましたので、若い社員の育成が急務となっていました。
 こうした中で、「人材育成のための教育体制を整えなければ」と考えていたところ、水戸商工会議所の茨城県地域ジョブ・カードセンターの制度普及推進員の方が当社を訪問したときに、ジョブ・カード制度の仕組みや有期実習型訓練の実施要領についての説明を受けました。以前から、当社でも活用したいと思っていましたが、当社のような中小企業では、活用しようという社内でのムードが弱かったために、活用するかどうかについては悩みました。
 しかし、茨城県地域ジョブ・カードセンターの訓練コーディネーターの方から背中を押され、アドバイスしてもらいましたので、有期実習型訓練に対する理解が深まりました。新規学卒者に少しでも早く確実に当社で必要な技術を身に付けさせることができるうえ、当社での人材育成に繋がるというメリットが大いに期待できると思いましたので、ジョブ・カード制度の有期実習型訓練を活用することにしました。

2.具体的な取組内容

株式会社陸前織物
Off-JTの実施風景

 前述の訓練コーディネーターの方の親切丁寧な指導のもとで職務分析を行ったうえ、新入社員を対象とした業務内容を基にして訓練カリキュラムを作成しました。
(1)訓練推進責任者には、中途入社し、当社で総務部長を務めている勤続7年の社員を任命しました。この社員は、指導力があるうえ、教育指導の経験もありましたので、他の社内講師も教育させました。
(2)当社としての教育体制ができていなかったために、社内講師をどのようにして選ぶかが大きな問題でしたが、以下のような基準で選定しました。

1)身に付けた学力や経験を活かした指導力のある社員

2)訓練推進責任者の指導によって前向きな発言ができるうえ、当社の人材育成ができる社員

3)経験が豊富であり、技術面で優秀な女性の社員

4)人事・総務の業務を担当し、教育のサポートができるベテランの社員

5)現場経験が多く、技術指導できる課長級の監督者
 訓練生は4人(男性1人、女性3人)の新規学卒者でしたので、社内講師は、Off-JTが3人、OJTが4人の合計で7人の体制としました。

(3)まず、社長と専務、管理職の8人が出席して新入社員の歓迎入社式を行いました。次いで開講式に移り、オリエンテーションから有期実習型訓練をスタートしました。
 オリエンテーションでは、緊張感が漂い、新入社員の自己紹介や役職者の自己紹介などの後は、当社の概要や人的体制などについて具体的に説明しました。特に、希望の持てる会社であることや社会人としての挨拶、エチケット、経済学、簡単な経理処理についての説明などを含め、Off-JTの重要性などを強調しました。
 このOff-JTでは、社内講師を務める社員が現場での作業を離れなければなりませんので、なかなか困難でしたが、役職者の相互の業務を調整するために努力したことによって、訓練生を一堂に集めた研修時間を確保しました。教材としては、インテリアパブリック協会からテキストやハンドブックなどを購入し、基本に沿いながら、縫製工程の流れの全体像や生地の入荷から裁断縫製まで、Off-JT(125時間)とOJT(370時間)の時間配分をみながら説明し、訓練生に理解を深めさせました。

3.阻害要因とそれを乗り越えるための工夫

(1)問題点
 今回、ジョブカード制度の有期実習型訓練を活用して感じた訓練実施計画の作成から訓練の終了に至るまでの問題点は、以下のとおり沢山ありました。

1)当社では、団塊世代の社員が多く、現在でも沢山の社員を雇用延長していますが、「体で覚えるのは工場である」「体を動かすことが仕事である」「役職者でも、自ら動くことである」「量をこなす」「納期を守るためには、時間外労働も、夜でも、休日でも、深夜でも」という昔気質の考え方をもっていました。
 これまでは、1.教えることはしないで、“自らから見て、頭で考えて”と、技術を覚えさせる風潮でした。また、2.組織が曖昧で、社長の職人気質が定着していました。3.指導者は、会議が好きではありませんでした。4.リーダーが社員を上手に使って、後継者を育てる環境ができていませんでした。5.中途入社の社員は、当社を改革されるのを好みませんでした。
 このような考え方が多かったことから、これまでは、十分な社員教育ができていませんでした。

(2)実施した工夫

1)当社は、既に創業以来37年が経過していますが、役員は、創業した社長とその長男(専務)、次男(工場長)の家族経営の会社です。訓練推進責任者がジョブカード制度の有期実習型訓練の意義について役員に説明したときは、現場の作業を中心とした考え方でしたので、説得には非常に苦心しました。そこで、有期実習型訓練を活用して人材を育成・確保するために、社内の啓蒙活動に努めました。これは、大きくなった当社をさらに良くするためには、若い人材を採用し、世代交代して後継者を育成していかなければならないからです。
 このため、社員教育の重要性を訴えたうえ、高校生を毎年採用して、大事な将来を見据えた社員教育をしていこうと説得しました。その結果、人材の育成について意見が合う役員や現場の課長の協力を得ましたので、何とか有期実習型訓練を実施することができました。

2)訓練推進責任者は、自ら学んで訓練生を指導しました。訓練の前にテキストを読んだり、現場での作業を自ら実施してみるなど、自信を持ってOff-JTの研修を進めました。ときには4人の訓練生を褒めたり、厳しく指導したリ、叱咤激励しました。
 日々の製品の仕上がりや納期を守る 必要がありますので、あせる役職者は、時間外の仕事になってしまいました。このため、教える時間がありませんでしたが、「人材を育てることは、将来の大きな当社の財産となり、仕事の効率があがり、社員を上手に指示し、命令することによって大きな利益があがる」「組織は総合力が必要である」ということを強調したうえ、説得し、激励しました。

3)社長と専務、工場長、総務部長などの10人で構成する役職会議を開催し、新入社員の受け入れの仕方や社員教育の仕方などに関する考え方については、頭を切り替えてもらいましたので、社内のムードができあがりました。毎日、巡回戦術で役職者の1人ひとりに会うたびに、社員教育の重要性を説いて歩きました。多くの社員も、次第にこちらと同様の考え方に変わりましたので、「協力しなければ」との雰囲気になりました。
 教育訓練は、社内講師を務めた7人の社員のみならず、全社員で支え合い、若い社員を教育する重要性を認識してもらうことが大事なことだと、痛感しました。

 また、有期実習型訓練は、人材育成の基礎となる現場での社員教育として非常に良い制度ですが、訓練実施計画書や助成金の支給申請書の書類の枚数が膨大でしたので、当社単独で作成できませんでしたが、訓練コーディネーターの方のきめ細かな指導がありましたので、非常に助かりました。

4.制度の活用による具体的な効果

(1)これまでは、1年前後で辞めてしまう若い社員が多かったのですが、今回の訓練を修了した4人の元訓練生は、全員が正社員として現在も頑張っています。このうちの2人は、一人前になって工場で仕事をしています。特に、工業高校の出身者は、特殊スタイルカーテンの組み立てやシエイドカーテンなどの技術を要する仕事であっても、何でもこなせる社員に成長しました。
 他の2人は、工場の事務もできるようになりました。このうちの女子社員も、縫製技術を習得し、現在ではフルに仕事をしています。当社では、縫製の経験がないと、他社のメーカーからの専門的な電話応対ができません。このため、今回の有期実習型訓練を通じ、全体的な当社の仕事で必要な知識と仕事の内容を理解させたことは、正社員として行っている現在の仕事に役立つことになったと思います。

(2)同期入社した4人を対象とした訓練を受けさせたことによって、連帯感や協調性ができましたので、何でも話せる雰囲になりました。そして、総務担当の社員に対しても、気軽に相談できる環境づくりもできました。来年度には、今回の訓練を修了した社員の弟が新卒で入社の予定ですので、当社のイメージの向上にもなり、うれしい限りです。

(3)新入社員を対象とした教育研修費を惜しがる会社がありますが、訓練の終了後に国から助成金を支給されるために、人件費や教材費などの負担軽減になりましたので、経営者サイドの理解を得ることができました。

(4)役職者の全員が社員教育を前向きに捉える雰囲気ができましたので、「今後も継続して実施したい」と言っています。

 教育訓練の実施は2回目となりましたので、そのノウハウが分かってきましたが、まだまだ訓練生に対する指導の仕方や管理職の資質の向上、指導内容など、さらなる反省点があります。このため、よく振り返ったうえ、指導内容の充実を図りながら、今後も継続してジョブカード制度の有期実習型訓練を活用していきたいと考えています。

(平成25年2月現在)

有期実習型訓練の概要

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有期実習型訓練の概要