企業から寄せられた声(文字情報)

株式会社塗装館エス・エス

会社概要

所在地: 石川県金沢市
業種: 建築・設備・鋼橋塗装および修復・ 復元塗装、「DPC MAIKA」の製造
資本金: 2,000万円
従業員数: 15人
URL: http://www.tosokan.jp

訓練概要

訓練コース: 大理石およびコンクリートの修復・復元スキル習得コース
職種: 修復・復元塗装
訓練生数: 1人(終了後に正社員採用)
期間: 平成25年4月~10月
訓練種別: 若者チャレンジ訓練(基本型)

1.制度の活用に取り組んだ目的

社屋の全景
社屋の全景

 当社の「㈱塗装館エス・エス」という社名の由来は、現在の社長が昭和51年11月に創業した「坂井塗装店」、そして、現在の専務が平成7年6月に設立した「塗装館」からきています。この2社から、「塗装館」と「坂井塗装店のS」、さらに、創業当時から最も大切にしている「技術力=SkillfulのS」を組み合わせて、平成14年6月に㈱坂井塗装店を現在の社名に変更し、合併会社としてスタートしました。
 当社での業務部門は、下記のように、現場の3部門と総務部から成り立っています

(1)塗装工事部・・・建築と設備、鋼橋といった塗装工事の施工をしている大黒柱の部門です。

(2)生産部・・・当社独自の下地処理加工技術を使用して既存のあらゆる生地に前処理液を施すことによって、業務用や家庭用のインクジェットプリンターで布に印刷できるDPC(ダイレクトプリントクロス)MAIKAの生産プリントを行っています。

(3)特殊塗装部・・・今回の人材を育成するための研修(若者チャレンジ訓練)を行った部門です。材料の入手が困難だったり、なんらかの理由によって施工が難しい場所で古来から活用されてきたフォーフィニッシュの技法を元にした修復・復元塗装や装飾塗装といった当社独自の塗装工法を確立しており、現在では、様々な現場で施工しています。これは、木や大理石、コンクリート、タイル、絨毯など、いろいろな素材で施工できます。

 ただし、このような施工をするためには、現場ごとの素材や状態をみたうえ、使用する材料と施工方法を決めなければなりませんので、現場での確実な判断が必要不可欠です。このようなことから、全ての施工をできるようになるためには、多くの時間と経験が必要です。特殊な工程も多いので、今後の業務の拡大を考えますと、人材の育成が急務だと痛感していましたが、そのために要する経費や事務の負担を考えると、新規の雇用にはなかなか踏み切れない状況にありました。
 このようなときに、当社を訪問した金沢商工会議所の石川県地域ジョブ・カードセンターの制度普及推進員の方から、「人材を育成する支援策としては、いろいろな国の制度があります。これらのうち、ジョブ・カード制度の若者チャレンジ訓練や有期実習型訓練については、当センターでお手伝いしますので、是非とも活用してみてはいかがですか」という提案があり、ジョブ・カード制度についての説明を受けました。その説明を聞いたところ、職業訓練を実施するためのアドバイスなどもあるため、当社でも実施できると思いましたので、紹介してもらった職業訓練のうち、若者チャレンジ訓練を選択し、実施することを決定しました。

2.具体的な取組内容

 ハローワークで求人を募集し、ジョブ・カードによる求職者との面接を実施したうえ、訓練生を決定しました。
 その後は、基本技術を習得させるために、多種ある修復塗装のうち、コンクリートと大理石に的を絞り、6カ月間の訓練期間で「大理石とコンクリートの修復・復元」の技術習得を目指した訓練計画を作成しました。この計画では、大理石とコンクリートの実際の現場での修復の施工補助ができるように、最終的なレベルを設定しました。
 具体的には、基礎知識と基礎技術を習得させるために社内で実施したOff-JTは、①道具や材料の知識と使用方法、②調色の基礎知識、③下地作りの実技、④表面描写の実技、⑤上塗り・艶調整の実技、⑦実際の現場に入るための新規入場者教育などです。これらは、総訓練時間数(820時間)の半分強にあたる420時間にわたって実施しました。
 Off-JTで基礎技術を身に付けさせた後は、OJTに移り、①大理石の実習、②コンクリートの実習、③大理石とコンクリートのサンプル製作の実習を400時間にわたって実施し、総訓練時間数820時間の訓練カリキュラムを終了しました。

3.阻害要因とそれを乗り越えるための工夫

OJTの実施風景
OJTの実施風景

 新入社員を対象としたこれまでの教育は、必要最少限の基礎知識を身に付けさせた後、ベテランの社員から現場での指導によって技術を身に付けさせる育成方法でした。しかし、実際の現場では、どうしても「仕事」を最優先にしてしまいますので、新入社員に対する指導は、後手になりがちでした。
 そこで、石川県地域ジョブ・カードセンターの制度普及推進員の方のアドバイスを受けながら、社員自身が訓練カリキュラムを作成しました。また、訓練生に対する指導と3人の訓練の指導員に対するフォローについては、どのように実施するかについて話し合ったところ、下記のように対応することにしました。

(1)現在、勤務している社員全員に対し、若者チャレンジ訓練についての理解を深めてもらうミーティングを実施する。

(2)訓練の指導者となる社員の現場でのスケジュールに対するフォローについては、社員同士で話し合って決定する。

(3)訓練カリキュラムの作成には、自分自身の意見とその理由を考えて携わる。

 6カ月間という長い期間にわたって訓練の指導者として現場から抜けることに対し、他の社員にとっては、その業務を代わって実施しなければなりませんでしたので、当初は大きな事務負担になるのではないかと心配しました。
 しかし、自分たちが考えて作成した訓練カリキュラムを明示したことによって、社員の誰もが理解しやすくなったうえ、訓練の効果に対する期待が社員全員からの支持を得る結果につながりましたので、非常にスムーズに訓練を進めることができました。
 このように、今回の若者チャレンジ訓練は、訓練生だけではなく、訓練の指導者を務めた社員にとっても、意識の向上につながり、社内での人材の育成についての考え方にも大きな変化をもたらしました。

4.制度の活用による具体的な効果

Off-JTの実施風景
Off-JTの実施風景

  昨年10月19日に若者チャレンジ訓練を終了し、訓練生を正社員として採用しましたので、現在も、特殊塗装部の一員として勤務しています。
 若者チャレンジ訓練で得た十分な基礎知識と基礎技術を身に付けて現場に入っていますので、焦りと不安が軽減され、自分自身にとって次に必要なことを考えながら、効率よく技術の習得に努めています。さらに、ベテランの社員も、理論的に説明しながら指導できるようになりました。
 また、訓練中に訓練生が記載していたOJTの実施状況報告書(訓練日誌)には、訓練生の考察や感想欄があります。本音については、訓練の指導者に対して口頭では話しづらいことがありますが、ツイッターなどで自分の気持ちを伝えることには抵抗のない世代のためか、この訓練日誌の感想欄には、訓練生の素直な気持ちが記載されていましたので、訓練の指導者がそれを読むことによって、訓練生とのコミュニケーションづくりと訓練の指導の方向性を決めるうえで非常に役立ちました。
 今回実施した若者チャレンジ訓練の効果としては、下記のようなことがいえると思います。

(1)社員が作成した訓練カリキュラムによって人材を育成できた。

(2)人材の育成にかかる費用を軽減できたうえ、当社にとって必要な教育を実施できた。

(3)人材の育成・指導に対する社員の意識が向上した。

 このようなことに加え、今回の若者チャレンジ訓練では、人材を育成するための社内の人事体系を確立できました。これは、今回実施した特殊塗装部だけではなく、他の部門(塗装工事部と生産部、総務部)でも十分に活用できるものですので、今後は、さらに充実した研修を実施できるように取り組んでいきたいと考えています。

(平成26年3月現在)

若者チャレンジ訓練の概要

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若者チャレンジ訓練の概要